出雲
日本神話に取り組んでいるとき、一人で出雲を訪ねてみた。
イザナギとイザナミが大岩を挟んで最後の言葉を交わしたヨモツヒラサカは、雨がしとしと降っていて十分2人の気持ちに近寄れた。
人々の豊かな生活のために産んだ「火」のためにイザナミは黄泉の国に行ってしまう。
愛する妻に一目会いたいと黄泉の国に足を踏み入れるイザナギ。
この切ない物語の延長線上に私たちの生活が成り立ち、また現在私たちにあらためて「火」のあらゆる功罪を問うている。
原発問題により、引き裂かれてしまった家族、イザナギ、イザナミが投げかけた大切なことを今こそ語り継がなければならない。
「岩をはさんで、ふたりは向かい合った。
イザナミは言った。
「恋しい夫のあなたですが、わたしは永久に地下の国で暮らします。そして、あなたの国の人間を一日に千人ずつ殺すことにしますからね」
イザナキは答えた。
「いとしい妻のあなただけれど、あなたがそうするなら、わたしは毎日千五百人ずつ生ませるようにするよ。
人間が決してほろびないようにしてみせるぞ」